僕がボサノヴァに求めるもの | ときど記 後記

僕がボサノヴァに求めるもの

ボサノヴァは、こじゃれたカフェのための音楽であってほしくない。リラックスできる、とか、おしゃれ、とか、うんざりする。
ストイックな音楽だからこそ美しいのに。確かに、明るい、小気味いいリズムのボサノヴァが似合う空間は在るけれど、躍動しまくるパーカッションは、むしろ気持ち悪い。

美しいボサノヴァ、それはたとえばジョアン・ジルベルトの、いわゆる『3月の水』。ギター一本の呟くような弾き語りに、ときどき控えめなパーカッションが重なる、こんなに静かな音楽が、なぜ人にじっと耳を傾けさせて逃がさないほど、パワフルなのか。
どんな聴き方をしても、これは「おしゃれな」音楽ではありません。ボサノヴァの神髄、だと思うのです。